Cyclo-Cross World Championship 2006
Female

オランダ・ゼッダム
1月29日11:30スタート/40分間 
レポート
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スタートに備え、9時半に選手はホテルを出る。
緊張の色も見えるが、3人ともに笑顔を見せ、雰囲気は良い。


優勝候補

今期最好調なのは開催国、オランダのエース
ファン・デン・ブラン・ディフェニー(オランダ)
そのルックスもあり、大人気だ。
彼女の回りには、常にマスコミが群れをなす。

去年のチャンピオン、クッファナゲル・ハンカ(ドイツ)は、
前評判によれば、今期はあまりかんばしくないという。

世界ランキング順にコールされるが、
ポイント換算もれがあり、
日本選手は2人が最後尾からのスタートになってしまった。


レースが始まる
一斉にスタート。
一周目をトップで終えたのは、やはりディフェニー。
その後に、ハンカとフォス・マリアンヌ(オランダ)が
2人でやって来た

若干18歳のマリアンヌは、チームのエース、ディフェニーが
有利に走れるよう、ハンカをぴったりマークする。
この時点で、後続とは20秒の差がついた。

日本女子たちの「挑戦」
日本女子は1分20秒ほどの差でやって来る。

まず、今期全日本のタイトルを初めて手中に収めた豊岡英子
世界選手権は、初めての挑戦だ。


そして、連続出場になる田近郁美
昨年は、思うように走れず、悔しい涙を流した。
「もう一度、どうしても走りたい」
強い思いを持って、オランダにやって来た。


オランダに渡り、結婚、出産を経て
5年ぶりに復帰した荻島美香(アライレーシング)

国内無敵だった真下正美が今期よりクロスを走らないことを知り、
日本のクロス界に風を、と復帰を決意した。

ふたりとも、直前のレースで負った負傷をおしての出場だ。

今回のコースでは、女子は特に、難易度の高い
片バンクの下りで苦戦したようだ。

バランスも取りにくく、路面は凍っている。
試走では、恐怖のあまり、
止まってしまう選手も見受けられた。

もちろん、自転車を担いでの大階段は
女子にとって、厳しい試練であったろう。

神様のいたずら

3周目、なんと、ディフェニーがパンク!
言葉を失うオランダのサポーターたち。

今シーズン好調だったディフェニーは、自信もあり、
差を開けようと、リスクを追っても、
難しいセクションを飛ばして行った。
それが仇になったようだ。

20秒の差。

ここでハンカは、ディフェニーを引き離そうと、
一気にペースを上げた。

ぴったり付いて行くマリアンヌ。
もちろん、マリアンヌはディフェニーの復活を待つために、
ハンカの後ろに付き、マークを続けるだけだ。

渾身の力で、ひたすらペースを上げるハンカと、
労力少なく、後ろについているだけのマリアンヌ。

だが、一人旅になったディフェニーは、そのまま失速し
追いつくことはなかった。

「狡猾なマリアンヌ」

女子のレースは、「5周」になった。

ペースを上げ続けたハンカは、
最終コーナーを曲がり、マリアンヌを確認する。
「...近すぎる」

追いついてこないエースのディフェニー。
自分に勝機が訪れていることを、
マリアンヌは途中から悟っていたことだろう。

「勝つためには、ハンカから、離れてはいけない。」

ハンカは、最後の賭けに出た。
だが、ドイツの女王に、女神は冷たかった。

伸びたのは、マリアンヌ。

ジュニアカテゴリーの、ロード世界選手権で優勝、
オランダ国内のMTB、ロードのジュニア選手権、
ヨーロッパ、オランダのシクロクロス選手権のタイトルを持ち、
スピードスケートの選手でもある、彼女のスプリント力は
一人で戦い、消耗しきったハンカを抜き去るには十分だった。

新しい女王が、誕生した

ゴール後、ハンカは、泣き崩れたという。
赤い目をして、強気な笑顔で表彰式に現れた

複雑な思いに惑うサポーターのためにも、
ディフェニーは。あくまで笑顔で振る舞う。
しかし、その痛々しい笑顔に生気はなかった。


日本の女子クロス事情


日本に「クロスの」選手はいない。
田近はMTBの、豊岡はロードの選手であり、
荻島はオランダに住む2児の母である。

昨年の田近は、クロスバイクに乗り始めて2ヶ月で
世界選手権にやって来たほどで、
特に女子の選手層は、厚いとは決して言えない。

特別な育成機関も、トレーニングメソッドもない。
そんな環境にあっても、
今年、女子は3名全員が立派に完走を遂げた。

豊岡は、世界の女子のトップ選手のスピードを
驚きを持って語った。
そして同時に、本気でクロスのトレーニングをして臨めば、
もっと上れる、という、手応えを。

誰よりも多くの声援を受け、走った田近。
完走し、昨年の雪辱は果たしたが、
それでも「何も出来なかった」と悔いる。

ちいさな子供をふたり持つ荻島は、練習時間が確保できず、
夜、ご主人が帰宅した後、
練習に出かけるのが精一杯だったと言う。
過去の世界選手権の記憶がある分だけ、
彼女は、この結果に満足できない。

日本からやってきた女子選手たちに、観客たちは温かかった。
彼女たちの行く先々で「ニッポン」コール、
そしてホームかと間違うほどの、名前のコールが沸き起こる。

ただし、コールに迎えられる胸中は
ある意味、とても複雑であっただろう。

もしも、先頭で走っていれば、
このようなコールはなかったであろうことも確かだから。

万全に準備してクロスに挑む彼女たちに、
ブーイングが投げかけられる日が、待ち遠しい。

初挑戦の豊岡
準備不足に、悔しい思いをした。
小柄な日本女子にとって、
この大階段は難関だ。
モデルもこなすディフェニー
(オランダ)最有力優勝候補
昨年のチャンピオン、ハンカ
(ドイツ)今年は厳しいか
ディフェニーが
トップでやって来た。
ハンカにはマリアンヌが
ぴったりマークする。
ディフェニーが遅れた!
熱狂的な応援を受ける田近
田近
荻島
ひとりで戦い抜いたハンカ
悔しいが、これがレースだ。